第六回「映画の保存と復元に関するワークショップ」開催



 八月二十七日〜二十九日には京都文化博物館に於いて大阪芸術大学の太田米男教授主催による「映画の保存と復元に関するワークショップ」が行われ、当館の松尾副館長が出席しました。この会合も今回で六回目となりました。そのため出席者112名という盛大なものでした。太田先生と松尾副館長とは、ともに今年の一月十四日に東京上野の東京文化財研究所で講演を行った間柄です。

 会場となりました京都文化博物館の別館は、かつて日本銀行京都支店だった煉瓦造りの建物で、高い天井や吹き抜けのあるホールなどが銀行時代の名残を遺しています。



 初日は太田先生の開会挨拶の後、東京国立近代美術館フィルムセンターの板倉史明様がフィルムセンターの取り組みについて話されました。この相模原のフィルムセンターは戦前には陸軍の戦後は米軍の弾薬庫となった場所で、返還後はフィルムセンターと宇宙開発機構となりました。

 フィルムセンターでは約六万本(一本十巻)ものフィルムを所蔵していますが、経年劣化によるビネガーシンドロームを起こしているものも多く、進行を抑えるために10℃、5℃、2℃に維持した部屋で保管しています。

 フィルムの保存は3Cと呼ばれるContents(映画の内容)、Carrier(セルロースナイトレート、アセテートなどの媒体)、Context(映写速度・画面比率などの上映形式、興行形態)を出来るだけ封切り時の状態にするとの考えに沿って行われます。

 フィルムセンターとはこのような仕事を行っている場所です。



 続いて登壇しましたコダックの宮村信吾様は「映画フィルムの歴史」を語られました。フィルムはセルロースナイトレートからアセテート、さらにポリエチレンへと変わっていきましたが、このような事実をコダックのようなメーカーの人でも知らないとのことです。そのためか話の内容に踏み込んだところがなく、いささか物足りなさを感じる講演となったのが残念でした。



 昼食後に「長恨」「銀輪」の二点を上演しました。前者はサイレント時代の作品で大河内伝次郎主演の幕末物で、約二十分間のほとんどが斬り合いというものでした。
 銀輪は名前の通り自転車の映画で、少年が見た夢が最新式の自転車に関するものという内容でした。



 その次に京都文化博物館の森脇清隆様がリニューアルされた文博のあゆみと成果について話されました。



 最後の登壇となりましたロチェスター大学准教授のジョアン・バーナディ様は、ご自身が関係されているL.ジェフリー・セルズニック映画保存学校の視点から見た海外の映画保存事情を話されました。専門が日本及び日本文学というだけあって約一時間の講演を流暢な日本語で通されました。



 講演終了後に約七十名が出席しての懇親会となりました。この席でセルロイドについて話をしますと、どなたも興味を持って聞いてくださいました。



 ワークショップは二日目には映画の復元に関する講演、そして最終日には実習があったのですが今回は初日のみの出席といたしました。



 ゆくゆくは太田先生と研究会とで互いに講師を派遣するという形にまでもっていきたいものです。



松尾 和彦


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