第一回セルロイドシンポジュウム報告 |
去る11月10日、大阪科学技術センターに於いて第一回セルロイドシンポジュウムが行われました。これまでは「カンファレンス」「集い」「交流会」などと称してきましたが、今回初めて「シンポジュウム」と銘打ちしました。考えてみればシンポジュウムという言葉を使わなかった方が不思議なことです。これからも二回目、三回目を開催していくこととなるでしょう。 定刻通り13時30分に開始となりましたシンポジュウムは、まず例年の通り小野由の小野会長による音頭取りで物故者への黙祷を行いました。 小野会長の司会のもと最初に登壇しました甲斐会長は、これまでに行ってきました「カンファレンス」「集い」「交流会」の内容について説明するとともに「セルロイドサロン」にも触れました。 思えば2000年10月9日に東京国際文化会館で第1回カンファレンスを開催して以来足掛け12年。ちょうど干支が一巡したことになります。その間に登壇されました講師の方の中には既に旅立たれた方もいらっしゃいます。その方々に応えるためにも今後とも続けていきたいとの思いを述べました。 続いての登壇となりましたセルロイドハウス横浜館の岩井館長は311の大震災による被害状況を述べました。 東北三県を中心に東日本に未曾有の被害を与えました大地震は横浜にも容赦なく襲いかかり、地盤の液状化、ガラス等の損傷、道路破壊等の損害を被ることとなりました。 横浜館に於いても二階のショーウィンドーが、ほぼ全滅するほどの予想外とも言える被害となりました。この被害状況をスライドで説明するとともに如何にして復活して10月13日の再開にこぎつけたかを語りました。 今回初の講師となりましたヤマト卓球の田辺工場長は専門であるピンポン玉が如何にして作られるか、セルロイドが卓球と関わりを持つようになったかを話されました。 卓球は身近なスポーツでありながら本格的に取り組んだ人は少ないという意外性を持っています。もしセルロイドがなかったら卓球は違う形になっていたことでしょう。その意味では一つのスポーツを作ったことになります。 サロンの執筆を行っています松尾理事は歯ブラシ、櫛、腕輪を中心とした日常品にセルロイドがどのように使われたのか、生産量、価格はどのようなものだったのか、技術や社会状況の変化によって変動していった様子を説明しました。 米の価格、大工の一日手間賃との比較などはセルロイドの実勢価格、生活の中で感じる物価などを説明する形となりました。 加工技術について話したのが大井事務局長で、ビデオとスライドとを駆使する形で如何にして製造されていたか、技術はどのように変化していったかを説明しました。 加工技術の進歩は量産体制の完備、価格の大衆化などにつながる重要な要素です。それだけにこの講演はある意味で今回のハイライトとも言えるものでした。 今年、セルロイドにとって重大な発表がありました。日本化学会の第二回化学遺産認定で「日本のセルロイド工業の発祥を示す建物および資料」が認定化学遺産009号に選ばれたのです。 最後の登壇となりました京都大学の植村名誉教授は化学遺産委員会委員長として認定に尽力された方です。それだけに「化学と化学産業のアーカイブス」と題する講演には力が入りました。 今年もまた例年の通り各講師が時間オーバーとなり予定していたコーヒーブレークは、配るだけで休憩はなし終了時間も予定から30分近く遅れることとなりました。それでも約35人の出席者からは一言の文句も出ませんでした。それだけ各講師の講演が充実していたということでしょう。 その後行われた懇親会では各人が和気藹藹とした雰囲気の中で歓談し今後の一層の発展を願う中で散会となりました。 今回ご出席いただいた方は来年以降も、また惜しくも欠席された方にも出席をお願いしたいものです。 |
松尾 和彦 |
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