セルロイドサロン
第108回
松尾 和彦
樟(楠)に関する地名あれこれ



 樟脳の原料である樟(もしくは楠)に関する地名を調べてみますと日本の至る所に存在しているのが分かります。

 先ずはそのものずばりの楠町(くすちょう)ですが、群馬県館林市、横浜市西区、三重県四日市市、大阪府富田林市、神戸市中央区、兵庫県芦屋市、山口県岩国市、大分県別府市、福岡県久留米市、佐賀県武雄市などに現存します。またかつては三重県と山口県に楠町があったのですが合併により今では四日市市と宇部市の一部となっています。この二つは何れも地名の通りクスノキを町の木としていました。

 また広島市西区には楠木町が存在しています。他に愛媛県には楠河村があったのですが、合併により三芳町、東予町、東予市を経て現在では西条市の一部となっています。大阪府東大阪市、同八尾市、徳島県阿南市には楠根があります。

 また字が違う大分県玖珠町には面白い言い伝えが残されています。大昔に巨大な一本の楠が生えていたために一帯は日蔭となり作物が良く出来ませんでした。そこで村人が大男に頼んで切り倒したところ日が当たり作物が出来るようになりました。切り倒した切株が伐株山で、倒れた時に跳ね上がって積もった土が万年山だと言われています。

 名古屋市、大阪府河内長野市、同泉大津市、熊本市、三重県四日市市には楠小学校があります。読み方は四日市市だけが「くす」残りは「くすのき」です。学校ということになりますと大阪府には樟蔭女子大学、樟蔭東女子短期大学があります。この二つは名前は似ていますが関連性は無いそうです。鹿児島県には甲子園にも時々登場してくる野球の強豪樟南高校があります。

 三重県四日市市の学校の近くには近鉄線の楠駅があります。鉄道関連で言いますと鹿児島県都城市にはJR九州の楠ヶ丘信号場、佐賀県伊万里市には松浦鉄道の楠久駅、大阪府枚方市の京阪線樟葉駅があります。この京阪電鉄には社名をもじった「おけいはん」というイメージガールがいますが、その四代目の名前は楠葉けい子で初代には樟葉部長という上司がいました。

 長野県には楠川、福岡県には楠田川、大阪府には楠根川といったように楠の字が用いられている川があります。
 セルロイドカンファレンスが開催されます大阪科学技術館は靭公園の四ツ橋筋よりの一角にありますが、この難波筋沿いには楠永神社があります。ここには樹齢三百年とも言われる二本の楠があります。過去に何度も伐採されそうになったのですが、その度に怪我人が出たとか、白い蛇が現れたとかいった変事があったために今でも残されています。

 このように樟(楠)に関する地名は日本の至る所に見られます。まだまだ他にもあると思いますのでご存知の方は連絡をお願いします。



 さて前回の最後に今でも専売制が行われていると述べました。それが何なのかのヒントとして一般の人なら一生に一度もお目にかかることがないものだと言いました。では答えを述べることとしましょう。今でも専売制が行われているものとはアヘンです。アヘンの歴史は古く紀元前3400年頃には既にメソポタミアで芥子が栽培されていました。

 日本には室町時代頃に入ってきたと思われ江戸時代末頃までは殆ど存在しないものでした。時代劇でお馴染みのアヘン窟のような存在は作り話でした。アへン戦争の教訓により幕府は諸外国との間に結んだ条約にアヘンの輸入禁止条項を設けました。この条項は明治政府も引き継ぎアヘンは専売品となります。その後法律の改正などがありましたが1954年に施行されたアヘン専売法により今でも専売制品となっています。

 このアヘンを一生に一度もお目にかからないと言いましたが、最近では鎮痛薬として積極的に使用されています。かつてはガンの末期などに使われていただけですが今では初期の段階から使用されて痛みを去るようにしています。アヘンで気になる中毒、依存性の問題は医療用ではまず起こることがありませんので安心してください。




著者の松尾 和彦氏は歴史作家で近世、現代史を専門とし岡山市に在住する。


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