研究調査報告 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
平井 東幸 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
セルロイドの世界生産からみた主役国の交替 セルロイド産業史@ |
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わが国でセルロイド生地の本格生産が始まってから今年は101年になるが、過去の産業として一般の注目を集めることも少なくなったものの、セルロイド商品としては、例えば、光沢があって色彩の豊かなセルロイドは、ファッション性の高い眼鏡フレームとしても若い人たちに愛用者が増えているようだ。最近のレトロブーム・昭和ブームの中で、見直しもされているようで慶賀に堪えない。 ところで、岩井薫生館長(セルロイド産業文化研究会代表理事)からセルロイドについては産業史が少ないとのご指摘を受けて、その産業としての歴史を調べてみると、文献情報が意外にも乏しいことが判明した。それでも、かつて産業史を専門にした経験から図書館などで、あれこれ調べいくうちに判明してきたこともあるので、これから少しずつご紹介して、読者の皆さまからのご高評を頂きたいと思います。 そこで、今回(第1回)はセルロイドの世界の生産統計についてみてみたい。 戦前の世界主要国別の生産統計については、すでに、松尾和彦氏が「各国の社会情勢とセルロイド生産高の比較」(本サロンの87号)のなかで明治33年から昭和14年までの詳しい数字を掲載されている。これは非常に貴重なデータである。 これらの数字も参考にしながら世界のセルロイド生産を断片的だが、まとめてみるとおよそ次の通りとなる。 表 世界のセルロイド(生地)生産の推移(トン)
なお、参考までに出所を説明すると、1926年の約4万トンは、1933年に国際連盟(因みに、国際連合ではない)のILO(国際労働局)が発表した『セルロイドの製造・使用における安全性』(英文)によるもの。1933年のデータは小栗捨蔵の「セルロイドに就て」から。1937年と1958年は井本稔他『有機工業化学』(昭和35年)により、昭和30年は石井頼三『プラスチックス読本』(1957年)の数字をもとに推定したもの。 この結果、次のように推測することができそうだ。
以上のことから、 @産業には発展期、成熟期、衰退期があり、セルロイドは繊維素系工業の一つとしてその典型を示したこと、 A同一の産業においても時代によって主役を務める国が交替すること、 Bそして先進国で勃興した産業は、技術革新と自国の産業構造の高度化につれて次第に後発国・新興国に移転していくこと。 ということで、セルロイド工業もこれを世界史的にみると、産業の盛衰の典型的パターンを見事に示してくれたと言えるのではないだろうか。そして、世界のセルロイド工業の歴史のなかで日本は、その後半期によく健闘した事実を称えたい。 |
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<平井東幸略歴> 千葉県市川市在住、現在、セルロイド産業文化研究会評議員、東京産業考古学会副会長、昭和33年早稲田大学第一商学部卒業、日本化学繊維協会調査部長、椛@維総合研究所取締役調査情報部長、岩手県立宮古短期大学教授、岐阜経済大学教授を経て、嘉悦大学教授、平成18年同退職。 |
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