セルロイドサロン
第132回
松尾 和彦
アロン化成という会社は



 先頃、アロン化成が所有する硬質塩化ビニルパイプが古河電工所有の塩化ビニル被膜電線とともに認定化学遺産第015号となりましたことを、速報という形でお知らせしました。



 ではこのアロン化成とはどのような会社なのでしょうか。先ず「アロン」という名前で思い出されるのが瞬間接着剤のアロンアルファでしょう。ところがそれはアロン化成の事業としては一分野で、他にシルバーカーなどの介護福祉分野、自動車の内装に使われるエラストマーコンパウンド、緑化材事業、PETリサイクル事業など多岐に及んでいます。

 その中でも中心となっていますのが給排水に使われる塩化ビニルパイプ部門は、1951年(昭和二十六年)9月に日本で初めて硬質塩化ビニル管の製造に成功しました。それがこの度化学遺産に認定されたというわけです。



 アロン化成の事業がこのように多岐に渡っていますのは、同社が二つの会社が合併したことによって生まれたからです。先ず一つは1928年(昭和三年)10月に誕生した寺岡発明化学研究所で各種合成化学品の研究、製造を行っていました。

 今一つが東亜合成の塩化ビニル樹脂合成会社として生まれましたオークライト工業で、この会社こそが硬質塩化ビニルパイプを製造したところです。

 その後寺岡製作所、東亜樹脂工業と名を改めました両社が1973年(昭和四十八年)1月に合併しましたのがアロン化成というわけです。



 このアロン化成に2008年(平成二十年)10月、新しい会社が加わりました。それがミクニプラスチックです。ミクニプラスチックは1927年(昭和二年)7月にダイセル化学工業三国工場から分離した三国セルロイドを出発点とする会社で、戦前戦後はセルロイド産業の雄として知られていました。セルロイドハウスが所蔵しています自転車のチェーンケースにも三国の製品があります。

 その後、セルロイド事業部門はダイセル化学工業に売却してしまいましたが、上下水道やPETリサイクルなど生活関連の事業を行って現在に至っています。これもセルロイド時代から培ってきた技術力があったからこそです。



 このようにアロン化成という会社は意外なほど身近な存在です。もしかしたら貴方のお宅の上下水道も、シルバーカーもアロン化成の製品かもしれません。


著者の松尾 和彦氏は歴史作家で近世、現代史を専門とし岡山市に在住する。


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