セルロイドサロン
第158回
松尾 和彦
コレクション奮戦記


 現在、セルロイドハウス横浜館には膨大な数のセルロイド関連コレクションが所蔵されています。その数は間違いなく日本で最大、内容も日本最高、世界的に見ても質量ともに指折りのものでしょう。
 これだけのものを集めるのは一朝一夕で出来るものではなく長い年月がかかりました。また様々な失敗を重ね、苦労もありました。今回は如何にして収集を行ったか、どのような失敗苦労、そして思いがけない大発見があったかをお伝えすることといたしましょう。

 岩井館長が長年の夢を実現させてセルロイドハウス横浜館を開館させたのは2005年3月のことでした。もちろんその前から計画をしていて第一回のカンファレンスを開催したのは2000年です。コレクションとなりますとさらに前から行っていました。

 その方法ですが、骨董店、骨董市、ネットオークション、さらに関係業者からの寄贈・委託などが中心で今も変わっていません。初期の頃には比較的簡単に集まりました。それというのもコレクターが殆どいなくて競合することがなかったからです。おかげで1,000円以下、時には1円で落札したこともありました。ただし失敗も多く、塩化ビニルをはじめとする各種プラスチックをつかまされたことも一度や二度ではありません。これは出品する業者もセルロイドがどのようなものか分かっていなかったということも関係しています。
 最近では、そのような失敗は殆どなくなりましたが、変わって起きてきた問題が価格の高騰です。セルロイドハウスが有名になるにつれてコレクターも増えてきました。こうなりますと需要と供給の関係で価格が上昇します。競合相手の存在が拍車をかけます。
 2013年に大間のマグロが一億五千万円をつけたことが大きな話題となりましたが、あれも二社が競り合ったからです。マグロそのものの価格ではなくて両社の意地の価格です。2014年には一社だけとなりましたので730万円余りという価格に落ち着きました。
 セルロイドは、これほどのことはありませんが、それでも10万円を超えるということも珍しくありません。特に最後の30分ほどが凄まじく、あれよあれよという間に上昇していきます。時には2〜3千円だったものが10万円を超えるという異常事態も起きます。こうなるともう手を引くしかありません。喜ぶのは出品した業者で思いもかけないボーナスをもらったようなものです。
 でもこのような異常事態が起きるのは主にキューピーなどの人形類が中心で、本、金型、写真、さらにはセルロイド製品でもケースなどは比較的安定しています。

 コレクションを行っていて楽しいことは思いもかけない品物を入手する機会に恵まれるということです。最近もかつて操業していた大阪の業者から大量の金型と品物を入手しました。常にセルロイド産業の中心にあったダイセルでさえも持っていないような資料を入手したこともあります。
 で、面白いのは珍品に限って安く入手出来るということです。例えば合併してダイセルとなる前の日本セルロイド人造絹糸の写真集、大正時代の東京セルロイド(板橋)付近の写真、昭和十四年のダイセルの求人票、ペン先などです。ところが最近ではこちらのほうも徐々に価格が上がってきています。
 コレクションをしていてありがたいことは感謝されることです。廃業した方にとっては保存することも処分することも大変です。そのような元業者から金型や製品を引き取ると感謝されます。

 これからもコレクションを行っていきますので珍品をお持ちの方、元業者の方などからのお声がかかるのを待っております。


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