通勤通学時に電車を利用しました。残念ながら座席は満員でしたのでつり革を利用したという経験は誰もがお持ちのことでしょう。
電車には定員がありますが、その定員とは座席立席を合わせた数です。座席の定員は一人当たり430mm、立席では一人当たり300mm2と決まっています。一度試されたら分かるのですが17cm少しの正方形に立っていることになります。狭い感じがされることでしょう。事実、狭くてこれでは定員になった時点でつり革につかまれない方が出てきます。またつり革というものは全員が進行方向を向いてつかまるものとして設計しています。ですから窓に向いたり反対方向を見たりしたら、余計に狭くなってしまいます。ですから電車には正しく乗りましょう。無駄なおしゃべりや意味のないスマホの操作などもやめましょう。
このつり革の形ですが丸、三角などの他にハート形があるのをご存知でしょうか。伊豆箱根鉄道で全車両に一個だけとか、西武鉄道のどこかにあるものです。公表はしていませんので見つけられたらラッキーアイテムです。また舞浜リゾートラインではミッキーマークの吊り革があります。
つり革にかつてリコ式と呼ばれるものがあったのをご存知の方も多いでしょう。使わないときには外側を向いていて使用後にはバネの力で元に戻るというものです。これは前後に揺れない、網棚などにぶつからないなどという利点があったために高加減速する路線に向いているとして地下鉄などに採用されていました。しかし今では戻す際にぶつかってしまう、急ブレーキをかけた際に折れてしまったなどのために使用されていません。
つり革の素材ですが、帯状の部分は名前の通り革でした。19世紀頃のアメリカは畜産が盛んでしたので牛の革を使用していたわけです。日本でも地下鉄、国鉄(JR)、都電の順に採用されていきました。
戦後の混乱期には買い出し電車の革が切れたり盗まれたりしました。物不足の頃には麻の帯、竹筒、木の棒などが使われたこともあります。その後、1956年頃からは塩化ビニールに変わっていきました。同じ頃に輪の部分も塩化ビニールとなりました。
ではその前には何が使われていたかと言いますともちろんセルロイドです。しかし火災の危険があるということで、地下鉄での使用が控えられるようになったのをきっかけに他の車両でも使われなくなりました。
セルロイド製の吊り革は手にした感触が温かいだけでなく、滑りにくい、破損しにくいなどの特徴があったために広く使われました。
しかし今ではほとんど見られません。時折、つり革が売り出されることもありますが、大抵は塩化ビニールやプラスチック製でセルロイド製ではありません。
でも全く見られないかというと各地にある鉄道博物館に行けば可能です。ところで鉄道博物館は幾つあるかご存知でしょうか。大宮と京都の二つは有名ですね。他にも北は北海道のふるさと銀河りくべつ鉄道から南は沖縄のゆいレール展示館まで約七十もあるのです。さらに所謂「鉄ちゃん、鉄子さん」が経営している鉄道カフェとなると幾つあるか分からないぐらいです。そのようなところに行きましたらまだ見られます。どこにあるかをご存知の方がおられましたら御知らせください。
また、このサロンをお読みになられた方の中に「自分はセルロイド製吊り革を持っているので一つぐらいなら譲ってもいい」と言われる方がいらっしゃいましたら、ご連絡をいただけたら幸いです。
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