日本には四季があります。暑い夏もあれば寒い冬もあります。その季節を乗り切るためには適度な冷暖房が必要となります。ではどのようにしたらよいでしょうか。
暖房は分かりますね。日光に当たったり、火を使えばいいのです。そのため暖房の始まりは分かりません。
では冷房はというと現在のようなエアコン、クーラーを使っての冷房が始まったのは1906年だと言いますから、人間はずいぶんと長い間、夏の暑さに悩まされていたわけです。
でも手をこまねいていたわけではありません。打ち水をしたり風を取り入れたりして暑さをしのいでいました。その中で一番身近なものが団扇であり、扇子であったわけです。そして扇風機へと発展していきます。風による体感温度の変化は俗に一メートルにつき一度と言われています。団扇、扇子、扇風機はクーラーが現れるまでは重要な冷房装置であり、現在でも手軽なものとなっています。
扇とは一体どのような意味なのでしょう。本来は軽い扉のことで転じて団扇となりました。歴史は非常に古くてエジプトの壁画や古代中国の遺跡から見つかっています。また日本でも弥生時代の遺跡から出土しています。
ここでの話は開閉が出来ない団扇のことです。では開閉をする扇子は何時頃でしょう。こちらは奈良時代末期もしくは平安時代初期に日本で作られたものです。その後、十世紀末頃に中国へと伝わりました。またポルトガルとの交易により世界各地に広まったと言われています。
扇子は儀式にも使われることで分かりますように貴族、公家などが使う高級品、団扇は上下を問わない一般大衆品でした。広まったのは江戸時代だとのことです。
ではさらに進んだ扇風機は何時頃でしょうか。これはモーターの開発と時を同じくしていますので十九世紀末頃の登場です。
団扇。扇子、扇風機何れにも使われた素材、それこそがセルロイドです。団扇には木材、芭蕉の葉、鳥の羽などが使われました。扇子は木材、鉄、ダチョウの羽などです。扇風機の羽は鉄からセルロイドそしてプラスチックへと変遷しました。
団扇や扇子の骨の部分は木材、竹が現在でも主流ですが象牙、鼈甲などが使われることもあります。団扇は一時アメリカ向けの重要な輸出品となったことがあります。それはまだ冷房がなかった時代に鉄道会社が広告宣伝材料として無料で配ったものです。今でもお祭りの時などに団扇が配られることがありますが、同じようなことをアメリカでも行っていたわけです。残念ながらこの時期の材質が何であったかは伝わっていません。
セルロイド製の扇子、扇風機は何れもセルロイドハウスが所蔵しています。適度な柔軟性を持っていますので風を起こすのに都合の良い素材でした。
団扇、扇子が起こす風は冷房が普及した現在であっても捨てがたいものがあります。また扇風機は省エネの冷房装置として最近また存在感が増してきましたので、これからも姿を見続けることでしょう。
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