セルロイドサロン
第21回
松尾 和彦
神戸港旧居留地の歴史とセルロイド
 旧居留地は一八七○年初代兵庫県知事伊藤博文と協議したイギリス人J.W.ハートが設計を行なった。
 一八六八年に神戸事件(備前藩の行列の前を横切ったフランス人を槍で突いた事件。死者は出なかったが責任者は切腹させられた)、堺事件(堺港でフランス兵に向かって土佐藩士が発砲を行なってフランス側に九人の死者を出した。そのため十一人が切腹させられた)などの外国人との衝突事件が相次いだために、長崎の出島と同じように日本人と外国人を分けるために約四万八千坪(出島の約十二倍)の居留地を設定した。

 現在のフラワーロードは当時生田川が流れていた。西側境界の鯉川筋も鯉川という川。北の道路が旧西国街道。
南側は海だったので三方が水に囲まれていた。これも出島に習ったもの。

 当時の周辺の地価は坪当たり一二銭五厘。勝海舟の海軍操練所の建物がイギリス領事館。鯉川尻の波止場前がアメリカ領事館。生田神社の境内がフランス領事館。

 一八九九年に条約改正で撤廃されると外国人は、こぞっ
て山手に住むようになった。それが今の北野異人館街と
なっている。
一番: アスピナル・コーンズ商会のドイツ人パウル・ハイネマンが坪当たり三円二五銭で落札。現在は農業会館。
このビルと鯉川筋を挟んで建っているのが日本郵船神戸支店のピル。
二番: アメリカ系商社のウォルシュ・ホール商会。後にビクトリア調の香港上海銀行となる。ここの建物は三菱製紙高砂工場に現存する。
三番: スミス・ベーカー商会のアメリカ人J.S.プライデンバーグが落札。後に三井物産神戸支店。現在は海岸ビル。
五番: 大阪商船神戸支店。一九二二年建築。現在は商船三井ピル。
六番: 最初のオリエンタルホテル。
八番: 現神港ピル。
十番: 坪当たり三円九四銭。
十一番: グラバー商会のイギリス人K・R・マッケンジーが坪単価八円六銭で落札。当時のメーンストリートであった京町筋に面しているためここが最高値。現在は神戸港電話局。
十三番、十四番、
二十三番、二十四番:
イギリス人E・C・キルピーのキルピー商会。最初は雑貨、機械類、マッチの輸入を行なっていたが、後に造船業に携わる。一八八四年測量艦大和を建造中に赤字がかさんだことを苦にしてピストル自殺を遂げる。
 この一帯は後に外国為替専門の横浜正金銀行、東京銀行神戸支店となり現在は市立博物館。ここの一階には当時の居留地の模型があります。
十五番: 現存している唯一の建物。オテル・ド・コロニーが火事で焼失した後の一八八ー年頃の建築。(株)ノザワの本社であったが阪神大震災で倒壊。その後、再建して現在はカフェレストラン。十六番との境の所に塀がある。
内部階段にはチーク材が使われていて、神殿風イオニアオーダの柱が見どころ。
十八番: スコットランド人のアレキサンダー・キャメロン・シムがラムネを製造していた。そのため今でも神戸では十八番と言えばラムネのことになっている。
二十二番: 一八七七年に、ここに六・六センチ四方の赤色のセルロイドがもたらされたのが日本で最初のセルロイド。
二十五、
二十六番:
現オリエンタルホテル。
二十九番: 大阪鉄工所を建て造船業の発展に力を尽くしたE・H・ハンターが坪単価二円六銭で落札。最初はキルピー商会に勤めていた。
三十六番: 現三菱信託銀行。鯉川筋を渡った西隣が旧清国人居留地(現中華街)。
三十八番: 居留地行事局があって自治行政の中心になっていた。大丸旧館。メンソレータムで有名なボーリスの設計。
四十一番: 旧居留地の碑とガス灯がある。三十九、四十、四十二、四十三番などとともに現在は大丸神戸支店。
五十一番、
六十番:
一九三四年に完成した旧(株)神戸取引所。現朝日会館。直線を主にした五階建てピルとほとんど窓の無い扇形の吹き抜け部分が合体したピル。
六十七番: チャータード銀行。このビルは現在活用されているとは言いがたい。
六十八番: 門柱がある。
七十九番: 一八七○年オリエンタルホテル開業。
八十番: 一八八二年にフランス人ルイ.ベギューが居留地ホテルを建造。一八九三年にオリエンタルホテルと改名。
八十二番: モルフ商会。お茶の精選工場。現在は日本銀行神戸支店。
八十三番: ジャーデン・マセソン商会。
九十五番: 北東角。旧居留地の碑がある。
一○三番: スワイヤー商会。その当時から営業を続けている唯一の会社
一○八番: 門柱がある。
一一五番: ドイツ総領事館
一二二番: デラカンプ商会。
一二四番: 門柱がある。
一二六番: クラブ・コンコルディア。
現在神戸市役所、東遊園地がある一帯は当時は公園になっていて日本人と外国人との緩衝地帯の役目を果たしていた。

当時の神戸外国人居留地の図

著者の松尾 和彦氏は歴史作家で近世、現代史を専門とし岡山市に在住する。

連絡先: セルロイドライブラリ・メモワール
館長  岩井 薫生
電話 03(3585)8131
FAX  03(3588)1830



copyright 2005, Celluloid Library Memoir House