セルロイドサロン
第28回
松尾 和彦
セルロイドと歌
 ソノシートをご存知でしょうか。今では殆どみられなくなりましたが小さなセルロイド製のレコードのことで、かつては懸賞の商品によく使われました。今のようにCDやDVDが無かった時代の子供達にとって、やっとの思いで当てたソノシートは貴重な宝物でした。そしてレコードプレーヤー(これも今では見られなくなりました)にかけては聞いたものです。

 今回は「セルロイドと歌」について見ていくことにしましょう。但し版権の関係がありますので詞の一部しか紹介することが出来ません。また書いていますことは必ずしもこれらの歌の詞とは関係がありません。興味のある歌につきましてはご自分で調べるようになさってください。

 ところで「セルロイド」という言葉が出てきたり、題名に「セルロイド」がついています歌をどれだけご存知でしょうか。「青い目をしたお人形はアメリカ生まれのセルロイド」はどなたもご存知のことでしょう。では、その他にはと聞かれると答えに詰まってしまうのではないでしょうか。私も調べてみるまではその一人でした。しかし以外なほど多くあるのに驚かされてしまいました。

 ピエロの「~celluloid~ セルロイド」は、まさにそのものずばりの題名ですが、この歌がどのような内容なのかは不明です。ご存知の方がいらっしゃいましたらご連絡をお願いします。

 キンクスという1960年代に活躍したアメリカのグループの「セルロイドヒーローズ」。ここで言う「セルロイドヒーローズ」とはスクリーン上で活躍した映画俳優のことです。映画フィルムはセルロイド製でしたので、その中で活躍する俳優はまさに「セルロイドヒーローズ(ヒロインズ)」だというわけです。

 かつては森田童子が、最近ではゆらが歌っています「セルロイドの少女」は、まさに言いえて妙だと思います。セルロイドの持つ透明感、どことなくはかなげな感触は、まさに少女が持っているものです。もっともそのような少女は殆どいませんが。

 上野洋子の「セルロイドの夢」。セルロイドは夢を持たせてくれる素材です。透明感、感触に加えて、色彩は夢の中に出てくる魔法のような感じがします。でも目が覚めてしまうと総てが無くなっている。「プラスチックの夢」では、このような表現は出来なかったことでしょう。

 ハニーフラッシュの「セルロイドの空」は気分が爽やかになります。空がセルロイドでできていたらどんなに気持ちがいいことでしょう。どこまでも青く澄んでいる南の海のような空になります。ただし火事が怖くて安心して暮らせなくなりますが。

 KANの「セルロイドシティも日が暮れて」。町がセルロイドで出来ていたら華やかな町になることでしょう。どこか柔らかい感じがして人々の心もなごむことでしょう。特に日暮れ時の美しさは例えようも無いほどになります。しかしこの町は火気厳禁で住むことが出来ません。

 童謡の「セルロイドのかざぐるま」は色々な人が歌っていてレコードも数多く出ています。かざぐるまは子供が夢中になる玩具の一つで風があるときには風任せ、無い時には走って回したものです。玩具屋や縁日の露店などにはお面と並ぶ主役でした。紙製のものも多かったのですが、子供達がねだったのはセルロイド製のものでした。そちらのほうがしっくりくるということを本能的に知っていたのです。

 最近、人気が出てきました及川光博が詞を作りました東馬健の「セルロイドの夜」。演歌とセルロイドとは似合っているような似合わないような取り合わせです。また夜とセルロイドも同じことです。セルロイドはどちらかと言えば明るいところの方が似合う感じがします。しかし日暮れ時が美しいように夜になっても美しいかもしれません。町の家々や店に灯りが点いている姿を見てみたくなります。

 この他にBOOWYの曲に「あんたの心はセルロイドでできているようだもの」という一節がある歌があります。この歌の題名をご存知の方がいらっしゃいましたら教えてください

 しかしセルロイドの出てくる歌で、しかもセルロイドメモワールハウス横浜館に相応しい歌といえば何と言っても松本隆作詞、筒見京平作曲、太田裕美歌の「ドール」でしょう。「横浜生まれのセルロイド 心がないからセルロイド」と一番で歌ったかと思うと、二番では「都会に生きてセルロイド やっぱりあなたもセルロイド 横浜育ちのセルロイド
頬紅はがれたセルロイド」と歌っています。メモワールハウスには、この歌のとおりのお人形が沢山いますのでご覧になってください。

 またセルロイドと歌については面白い話があります。一九一九年(大正八年)に八社が大合併をして大日本セルロイドとなったことは有名ですが。その時に合併をした会社の一つに能登屋セルロイド工場があります。その跡地が特許レコードというレコード会社となったのです。セルロイド製だったかどうかは分かりませんがプレス機器などはそのまま使用したのです。この会社もやがては無くなり今では釣具店となっていまして、能登屋があったことを思い返せるものは残念ながら皆無です。

 最初に述べましたソノシートですが、お持ちの方で寄贈してもいいと思われている方はご連絡をお願いします。また青い目のお人形を作詞した野口雨情が一九三○年(昭和五年)に作詞して、中山晋平の作曲、平山美代子が歌った「キューピーピーちゃん」のレコードをお持ちの方もご連絡をお願いします。


著者の松尾 和彦氏は歴史作家で近世、現代史を専門とし岡山市に在住する。


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