セルロイドサロン |
第47回 |
松尾 和彦 |
セルロイドの見分け方 |
セルロイド製品が手に入ったはいいが本物なのか、ラクトロイド、アセチロイド、硬質塩化ビニールなどと見分けがつかないことがあります。またセルロイドは象牙、珊瑚、鼈甲などの模造品として作られたものですので、そのような天然素材との判別も困難なことがあります。 一番簡単な見分け方は燃やしてみることですが、それでは肝心な品物が損なわれてしまいます。非破壊的な方法で見分けることが出来るのでしょうか。今回はこの点について調べることといたしましょう。 先ずはピアノの鍵盤からです。 ピアノの鍵盤は、かつては象牙が使われていました。吸湿性が良いのでさらっとしていて指につかないし、柔らかくてクッション性が良いことから爪がコツコツとあたる感じがして弾きやすいのです。しかも光の反射が少ないので演奏者本人も観客席からもまぶしくないのです。 これだけの特徴を兼ね備えていたものですからピアノの鍵盤として使われたのです。でも御存知の通りワシントン条約で使用禁止となっていますので見かけることも少なくなってきました。 もしピアノの鍵盤が、ややクリーム色もしくは黄色に変色していて木目がありましたら象牙、もしくは人工象牙でしょう。これに対してセルロイド製は木目が無いのが特徴です。でも中には木目を持ったセルロイド製もありますので注意が必要です。 最近良く見かけますアクリル製の鍵盤ですと真っ白で木目があるので見分けることが出来ます。 次に煙草入れ、櫛、簪、眼鏡などの鼈甲商品について見ることといたしましょう。 セルロイドと鼈甲とでは熱伝導率が違いますので、ベテランの方でしたら手に取った時の感触で分かります。そのベテランの方が持っていますような拡大率の大きな(十倍位)のルーペで見てみますと、鼈甲は厚みを出すために張り合わせていますので層になっているのが分かるかと思います。 また髪飾りなどのように金具や石が付いているものでしたら、付け方が違います。 セルロイドでしたら小さな穴を開けて金具を熱しながら取り付けた後に冷却しますので、囲んだような形になっています。これに対して鼈甲は周りが盛り上がっているような感じがします。しかしこれは一般的なもので正確さに欠けます。 セルロイドは人工物ですので、どうしても斑点が一定になってしまいます。また光沢がギラギラとしていてニス状の光り方をしてしまいます。 これに対して鼈甲は斑点が不規則で透明感のある光り方をするのが特徴です。 象牙との比較はどのようにすれば出来るのでしょうか。御存知の通りセルロイドは象牙の模造代替品として開発されたという歴史があります。そのため象牙に似た特徴があるのですが、そこはやはり天然物と人工物ですから様々な違いがあります。 象牙はCa5(PO4)3(OH)と有機物とで出来ています。その特徴としては縞目模様がある、細かい彫りが可能である、薄くすると光を透き通す、時代とともに飴色に変化していく、時代のひびと言われる年輪のようなクラックが百年単位で入っていくなどがあります。逆に言えば、それらの特徴が見られなければ本象牙ではないということです。 ただしこれはあくまでも「本象牙ではない」だけのことで、練り物の象牙などにもこのような特徴は見られません。つまりセルロイドであるかの見分け方とはなりませんので注意してください。 セルロイド製品としてよく見かけられるものの代表格である御人形は、どのようにして見分ければよいでしょうか。 セルロイド人形は吹き込み成型法で作られていますので、よく調べればどこかに小さな穴があるのを確認することが出来ます。これに対して塩化ビニールは射出成型法を取っていますので、どこかに突起のようなものがあります。また軟質塩化ビニールは手触りがまるで違いますので直ぐに分かります。 面倒なのが硬質塩化ビニールやアセチロイドなどで作られた壁掛けスタイルの人形です。吹き込み穴は見られませんし、射出した時の突起は取り去っています。手触りも似ています。 このような時にベテランは舐めてみるのです。アセチロイドですと苦いような味がするが、セルロイドはまろやかだといいます。しかしこれはよほどのベテランでないと分からないことですのでお奨めできません。もう少し一般的な方法ではお湯を浸して強く絞った布で擦ってみるというのがあります。セルロイドでしたら、あの樟脳の匂いがするはずです。 今でも一番良く手に入るセルロイド製品と言えばピンポン玉ですが、これは実際に打ってみることにしましょう。セルロイド製でないと妙に弾んだり、飛ばなかったりするはずです。また一瞬、ラケットや台に吸い付いてから飛んでいくという独特の感触はセルロイド以外のものでは出せない特徴です。 このようにセルロイド商品には、それぞれの見分け方というものがありますが決定的な方法ではありません。やはりベテランの方に見てもらうのが一番だと思います。もし、これだという方法を御存知の方が、いらっしゃいましたらご連絡のほどをお願いします。 |
著者の松尾 和彦氏は歴史作家で近世、現代史を専門とし岡山市に在住する。 |
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