セルロイドサロン
第64回
松尾 和彦
セルロイドが見たくなったら

 「セルロイドは、どこに行ったら見られますか」との質問をよく聞きます。確かに毎日の生活にセルロイドが溢れていた時代とは違って、卓球ボール、ナイフの柄、櫛ぐらいしか見なくなっているのが現状ですので、見かけないでしょう。今回は、どこに行ったら見られるかについて調べることとします。


 実は玩具を収納、展示している博物館でしたら大抵のところで見ることが出来るのです。しかしそれでは当たり前すぎるので、まさかそんなところにセルロイドがあるとは思いつかない場所を紹介することとしましょう。



一、秩父宮記念スポーツ博物館

 昭和天皇の弟である秩父宮は「スポーツの宮」と呼ばれて親しまれていました。そのために国立競技場の近くにあるスポーツ関係の品を収蔵、展示している博物館に名前が取られました。

 この博物館は名前の通りにスポーツ関係の品を展示して、日本のスポーツ史が分かるようにしています。

 ここの展示品の一つに卓球ボールがあります。ご存知の通り卓球ボールは現在でもセルロイドが使われていて代替品が見あたりません。昔と今とでの違いは大きさだけで、実に息の長いセルロイド製品です。

 また絶対に忘れてはいけないものがセルロイド発明のきっかけとなりましたビリヤードボールですが、こちらのほうも勿論展示されています。

 都心にありスポーツ関係の競技場、体育館などが集中している場所ですので観戦の前後などに立ち寄られてはいかがでしょうか。

         東京都新宿区霞ヶ丘十−二
         ○三−三四○三−一一五九
         開場時間 九時三十分−一六時三十分
         休館日 第二、四火曜 三月一日
         入場料 三百円



二、文具資料館

 柳橋と言えば、どこかから三味線の音が聞こえてきたり芸者が歩いていたりするような気がする町ですが、そんな町の一角に文房具を展示している小さな博物館があることはあまり知られていません。

 セルロイドは直線定規、三角定規、分度器、雲形定規、下敷き、筆箱、ペン軸、万年筆、鉛筆キャップなど数多くの文房具に使われました。そのため皆様は懐かしい思いをされることとでしょう。是非一度は訪れていただきたい場所です。

 他にも徳川家康が使用した鉛筆(レプリカ)や、昭和初期に庭付き一戸建て住宅が買えるほど高価だった「モンロー電動計算機」などの目玉商品もあります。

         東京都台東区柳橋一−一−十五
         東京文具販売健康保険組合会館一階
         ○三−三八六一−四九○五
         開場時間 月曜から金曜の十三時−十六時
         入場無料



三、日本カメラ博物館

 セルロイドの用途として重要なものにフィルムがあります。フィルムといえばカメラですので、この日本カメラ博物館にも多数のセルロイドフィルムが収蔵されています。時々は特別展示もされているようです。

 セルロイドフィルムは燃えやすかったために火事の原因となることが多く、そのために酢酸セルロースへと切り替えられてしまい、現在でも残されているところは少なくなっています。

 ここへ行かれましたら世界に数台しかない「ジルー・ダゲレオタイプ・カメラ」といった主役のカメラだけでなく、脇役のフィルムをも見るようにしてください。

         東京都千代田区一番町二十五
         JC11一番町ビル地下一階
         ○三−三二六三−七一一○
         開場時間 十時−十七時
         休館日 月曜日
         入場料 三百円



四、印刷博物館

 線数メーターというものをご存知でしょうか。印刷に詳しい方でないと聞いたこともないでしょう。小さなものでは名刺大からあるセルロイド製の板ですが、これによって印刷の細かさを知ることが出来ます。カラー印刷だと百七十五、モノクロで百五十ほどが標準です。

 偽札などの判定には、もっと精度を高めた線数メーターが使われています。

 この印刷博物館では線数メーターは勿論展示されています。売られているという話も聞きますが確認はしていません。意外なところで意外なセルロイド製品に出会う例の一つと言えましょう。

          東京都文京区水道一−三−三
          トッパン小石川ビル
          ○三−五八四○−二三○○
          開場時間 十時−十八時
          休館日 月曜日
          入場料 三百円    



五、玉水屋

 名古屋の錦と言えば代表的な繁華街の一つですが、その一角にあります玉水屋は伝統のある眼鏡屋ですので、江戸時代の眼鏡から現在に至るまで取り揃えています。もちろんセルロイド枠の眼鏡もありますので、近くにいかれました時には足を伸ばして見学させてもらってはいかがでしょうか。

          名古屋市中区錦三−二十四−十二
          ○五二−九六二−六八九五



六、ペンクラスター

 かつて合格祝いの定番は万年筆でした。これを胸に挿しただけで頭が良くなったような大人になったような気がしたものです。

 万年筆の軸として使われていたものには木材やエボナイトなどもありますが、セルロイドを欠かしてはいけません。

 こちらではセルロイドが全盛であった五十年程前の万年筆を数多く取り揃えています。ビンテージ品の販売や修理などもしてくれています。

          横浜市西区浅間町二−一○一−九
          ライジングビル YOSHIZAKI 202
          ○九○−一九九二−一四○○



七、京都嵐山想い出博物館

 キューピー人形と言えば代表的なセルロイド製品ですが、大きなキューピー人形が入り口で迎えてくれるのが京都嵐山想い出博物館です。

 それもそのはずで、ここはキューピー生みの親として知られているローズ・オニール財団公認のキューピー人形の展示販売を行っている場所です。もちろんセルロイド製の物も多数展示されています。

 ここの他にも大阪の天保山と神戸にキューピークラブのお店があって、セルロイド
「風」のキューピー人形が売られています。

          京都市右京区嵯峨二尊院門前往生院町六−五
          ○七五−八六二−○一二四
          開場時間 十時−十七時
          入場料 三百円



八、出雲そば日本一大名陣

 出雲と言えば信濃と並ぶそばの名産地ですが、宍道湖畔にある出雲そば日本一大名陣は、時々テレビ、新聞等のマスコミに登場しますのでご存知の方も多いかと思います。

 この店が有名になったのは某人気鑑定番組に登場したからですが、その厖大なコレクションには目を見張るしかありません。もちろんセルロイドの玩具も多数あります。しかし有名になりすぎて壊されたりすることも多くなった為に、十八歳未満の来店を断るという始末になっています。

 この店のユニークな点はコレクションを見るだけなら入場料として千円を取りますが、そばを注文すれば入場料無しで見ることが出来ます。そばは五百円からなので絶対にこちらの方がお得です。

           松江市宍道町七二九
           ○八五二−六六−○九六一
           営業時間 十二時−売り切れまで
           合戦中の旗が出ていたら営業しています



 では誰もが「ここならあるだろう」とおもう所はどこでしょうか。その判断基準としては先ず第一に「おもちゃ」という字が入っているということです。

例: 赤穂玩具館、おもちゃのやかた遊遊館、奥飛騨おもちゃ博物館、金沢おもちゃ博物館、雲仙おもちゃ博物館、箱根おもちゃ博物館、日本玩具博物館など

 また懐かしさを感じさせるところにもセルロイドがある場合が多いようです。

例: 駄菓子屋さん博物館、昭和レトロ商品博物館、昭和の歴史館、師勝町歴史民俗資料館、国立民俗学博物館など

 機会がございましたら、このような場所を訪れてセルロイド製品をご覧になってください。また手にされたい方は骨董屋や骨董市などを訪れるようにしてください。必ず一軒や二軒はあるはずです。



 最後に手前味噌ではありますが、最も系統立てて詳しい展示をしているのは私どもセルロイドハウス横浜館であると言わせていただきます。



著者の松尾 和彦氏は歴史作家で近世、現代史を専門とし岡山市に在住する。


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