太陽刷子探訪記


 5億本。これは何の数字だとお思いですか。実は日本国内における歯ブラシの年間消費量です。そのうちの4460万本が太陽刷子で生産されている本数です。一日にすると15万本。日本で使われている歯ブラシの12本に1本という計算になります。



 これだけの歯ブラシを作っている工場に小野、大井、松尾の三名が訪れました。
 近代的な設備の見学を行うためには、先ず頭髪を被う帽子、防塵着、マスクの着用が義務付けられます。そしてエアシャワーを浴びてからでないと中に入れません。それだけ品質管理を徹底していることの証です。そして製品が出荷されるまでには人の目による全数検査、合格品のうちから数パーセントを抜き取っての機械検査、さらに包装後の最終検査を経てからでないと出荷されません。口の中に入れるものですから、これだけ厳しいチェックがあるわけです。



 歯ブラシの毛のカット方法には以下のようなものがあり、それぞれに特徴を持っています。

  • 縦横切り
    先端を縦横ともにカットすることにより形状が「多丘型」になり歯と歯茎の境目の凹凸に毛先がフィットすることになります。
  • ストレートカット
    文字通り真っ直ぐなカットで、どんな磨き方にも対応し歯の表面をしっかり磨くことが出来ます。
  • 横山切り(段切り)
    ストレートカットよりも毛先の接触性が30%アップしますので歯間の歯垢も落とします。
  • パワーカット
    先端が高くなっているカット方法で高さが不揃いな歯にも対応し、細かな部分にも毛束がしっかりと入り込みます。
  • ペンシルカット
    文字通り鉛筆のような形をしていて歯頸部、歯間部、最後臼歯遠心部などのブラッシングに適しています。
  • 縦切り(ドームカット)
    歯肉への刺激を抑えながら、歯と歯茎の境目にフィットし歯垢をとらえるカットです。
     もちろん太陽刷子ではこれら総てのカットに対応しています。


 植毛方法として面白いものに多色植毛があります。これは文字通り様々な色の毛を植えているもので、例えば両サイド、先端、根元で四色に色分けしているものは本来歯科医院で「この部分を使って磨いてください」と指導用に使っていたものですが、患者が欲しがって一般用になったものです。



 太陽刷子は1923年(大正十二年)創業の老舗で、二代目が関西におけるセルロイドプラスチック業界の重鎮として知られる小倉吉三氏です。そして三代目が集い、シンポジュウム等に出席されている義生氏。現社長の輝紀氏が四代目です。

 場所が神戸の埋め立て地であるために少々交通の便が悪いのが難点ですが、そこは従業員用の送迎バスも運行しているなど福利厚生に留意している会社です。

 ホームページ(http://www.taiyo-brush.co.jp/)もなかなか面白いので一度覗かれてみられてはいかがでしょうか。



 ところで最初に日本で使われている歯ブラシの12本に1本が太陽刷子で作られたものだと言いました。ところがそのような名前の製品を見たことが無いと言われることでしょう。それはOEM生産と言いまして他社ブランドの製品を生産しているからです。太陽刷子で生産している歯ブラシはライオンの製品です。ですからお手元にある歯ブラシが太陽刷子で作られたものであることに気がつかないということです。



松尾 和彦


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