日本セルロイド加工探訪記


 大阪府東大阪市は東京都墨田区、江東区、大田区などと並ぶ「ものづくり」の町として知られています。2009年1月23日には種子島宇宙センターから「まいど1号」という名の人工衛星を打ち上げたように、最先端技術の中心地でもあります。ただし「まいど1号」は管理委託料の不足により9ヶ月後に運用停止に追い込まれるという、あまりありがたくない落ちがつきました。



 交流会やシンポジュウムに毎回のように社長の高井さん、常務の橋本さんが参加されています日本セルロイド加工も「ものづくり」の町東大阪の一角にあります。先日、その日本セルロイド加工を小野、大井、三木、松尾の四名が訪問しました。

 この会社は名前の通りセルロイドの成型を行っていますが、代表的な製品としてゴルフクラブのネックソケットがあります。ここはシャフトとヘッドをつなぐ大事な部分でクラブの命とも言える場所です。ここがしっかりしていないと曲がったり外れたりして、折角のナイスショットが台無しになってしまいます。

 ネックソケットにセルロイドが適している理由は、他のものだと緩んでしまうことがあるのに対して締まっていく性質がある、耐衝撃性に優れている、加工が容易であるなどの特性を持っていることが挙げられます。

 この製造現場は大変な作業で樟脳、エタノール、溶剤などの臭いが入り混じった中での仕事となります。火気厳禁ですので照明は蛍光灯、それもカバーの中に入ったものとなります。押し出し機から出てくる管を引っ張っていくのですが、その速度によって太さが違ってきますので、職人芸が必要とされる場面です。また含まれている溶剤が飛んでしまいますので目減りする分を考慮する必要があります。直ぐに出荷するのではなくて六ヶ月程度寝かせてからですので、市場に出た時には収縮しているわけで、これの計算も職人芸です。

 ところでこのネックソケットはどうして作られたのでしょうか。それはシャフトを装着するため丸い棒の真ん中に穴を開けないといけないのですが、これが難しい作業だったのです。ドリルで開けたり、型に流し込んだりしていたのですが、どうしてもずれてしまいました。またメッキがつきにくくて目立ってしまうなどの問題が生じました。そのためにソケットでつなぐ方が効率的でしたし、性能アップにもつながりました。それが今でも続いているというわけです。

 このように大事なネックソケットですが、その価格は一個百〜二百円です。職人さんの苦労、市場に出てくるまでの期間などを考えると安すぎると思います。ゴルフをやられる方は一度日本セルロイド加工を訪れられてはいかがでしょうか。



 日本セルロイド加工では、ネックソケットの他にも万年筆などのセルロイド加工を行っています。こちらにも様々な職人芸が加えられていますので使われる際には思いをはせるようにしてください。



松尾 和彦


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