東京スカイツリー見学記




  名にしおわば いざ言問わむ 都鳥 我が思う人は ありやなしやと

 あまりにも有名な在原業平の歌です。東京都の鳥が都鳥、すなわちユリカモメとなったのも業平、業平橋、言問橋などの地名が今でも残っているのも、この歌があったからこそです。

 この一帯はかつて低湿地帯で、毎朝なめくじを杓ですくってドブに捨てに行った話が古今亭志ん生の貧乏自慢に出てきます。今ではさすがにそのようなことはないでしょう。

 この地における最大の話題、と言うよりも今現在の日本における最大の話題は何と言っても東京スカイツリーです。東京、埼玉、神奈川の一部の旧国名武蔵にちなんで六三四メートルの高さにした電波塔に関西地区の評議員が見学してきました。

 当日はあいにくと曇りがちの天候で視界が良くなかったのですが、さすがに三五○メートル、四五○メートルという高さは圧倒的で足元の墨田区江東区が地図の通りの形に見えました。最高点であるソラカラポイントへと登っていくらせん状の通路や足元が丸見えとなるガラス床など見どころ満載でした。



 人間の高いところへの憧れは昔からあるようでして、有名なものはピラミッドやケルン大聖堂、サクラダファミリア、エンパイアステートビルなどがあります。また聖書に出てくるバベルの塔は神の怒りをかい、それまでは一つしかなかった言葉が多数になり互いの意思疎通が出来なくなったとあります。

 また世界貿易センタービルが航空機を使った当時多発テロにより崩壊し多数の犠牲者を出しましたことは記憶に新しいところです。



 スカイツリーは完成前から試練に見舞われます。言うまでも無く昨年の東日本大震災をもたらしたマグニチュード9.0の大地震です。このために三月オープンの予定が二ヶ月延びてしまいました。

 ところが大きな被害が出なかったのは何故かと言いますと五重塔の知恵です。日本には各地に五重塔がありますが過去一度も地震によって倒壊したことがありません。それは芯柱が支えているからだと思われていたのですが、意外なことに地面に接していませんでした。しかしそれが良かったのです。地震の時に芯柱は塔本体と逆の方向に揺れます。その結果揺れを打ち消しあうこととなり被害を受けなかったのです。スカイツリーにこの技術が導入されていたのです。

 スカイツリーは七月まで事前の抽選に当った人だけですが、ソラマチは自由に出入りできますので先ずはこちらから行かれるのもよいかと思います。ただしゴミは必ず持ち帰る、駐車駐輪違反はしない、夜遅くまで騒がないなどを守って近隣の方の迷惑にならないようにしましょう。



松尾 和彦


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