セルロイド交流会開催




 去る十一月十五日、大阪セルロイド会館に於いて約二十五名の出席のもと「セルロイド交流会」が開催されました。

 先ず登壇した三木幹事はセルロイドの金型及び吹き込み成形のビデオを見ながら説明をいたしました。

金型の成型も吹き込みも今となっては貴重な存在となってしまい、特にセルロイド玩具の吹き込み成形を行っているのは一人だけになってしまいました。現場経験が豊富な三木さんの話しぶりは流石と思わせるものがあり、誰しもが引き込まれていました。

 続いて登壇しました京都セルロイドの川上清史さんは兄の崇さんとともにセルロイド万年筆を手掛けられています。

 この技術を習得するために以前にお話ししていただいたことのある岡崎さんの下に通われた最後の弟子とも言える方です。

 岡崎さんから伝授された技術に京都風の感性を加えた万年筆は話題となり、京都観光のためではなく万年筆を買うためだけに訪れる客も増えています。川上さんの思いがこもった万年筆を手元に置かれてはいかがでしょうか。

 三番目となりました小野理事は「セルロイドの流通と加工への考察」として、セルロイドが明治時代に玉として加工されていたこと、国産化への道、第一次大戦による輸出市場の変化、流通機構の形成、各種工業組合の形成などについて話しました。

 関西セルロイドプラスチック工業協同組合の理事長を務められ、小野由四代目の小野さんは経歴を生かした話しぶりで落ち着いた感じでしたので分かりやすく感じられました。

 最後の登壇となりました松尾副館長は「生活史におけるセルロイド」として、セルロイドが如何にして生活に密着したものとなっていったか、そのなくてはならなかった存在がどうして各種プラスチックに取って代わられたかを話しました。

 調査能力で見るべきものがありサロンを担当している副館長は、統計資料などを示して栄枯盛衰を語りました。

 各講師の話が終了した後に先日関西興産で見つかりました各種金型及び成型されましたブローチ、腕輪等を展示したところ出席者各位が思わず感嘆の声を挙げました。それもそのはずで、どのようにして成型したのか専門の技術者でも分からないのです。各人とも首をひねっていました。

 その後開かれました懇親会では当日がボジョレヌーボーの解禁日だったこともあり、ワインも提供される盛況なものとなりました。

 上は九十が近いOBあり下は二十五にもならぬ現役ありの懇親会では、あちこちで話の輪が開きました。皆に共通していたことはセルロイドに対する熱い思いです。

 セルロイド研究会では今後も交流会を継続して開催していくつもりでいますので今後ともよろしくお願いします。



松尾 和彦

【2012年11月15日セミナー発表テキストをご紹介します(PDF)】
  セルロイド製万年筆の製造 川上 清史氏(株式会社オーグラム・デザイン 取締役)
  セルロイドの流通と加工の変遷考察(大阪)  小野 喜啓氏(セルロイド研究会評議員)
  生活史におけるセルロイド 松尾 和彦氏(セルロイドハウス横浜館副館長)

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