元興寺訪問記

 
 日本で最古の寺はどこかと聞かれて答えられる方は少ないでしょう。実はこれ答えが二つあるのです。一つ目は607年に創建された法隆寺だとするもの。今一つが588年に伽藍造営に取り掛かり609年に完成した飛鳥寺だとするものです。
 飛鳥寺の流れをくむのが南都七大寺の一つである元興寺です。蘇我氏の寺である元興寺は平城遷都とともに今の明日香村から奈良へと移ってきました。そして残ったのが今の飛鳥寺です。

 その古刹を先日セルロイド産業文化研究会のメンバーが訪問いたしました。きっかけとなりましたのは元興寺文化財研究所の山田卓司様からのメールです。
 この研究所は国宝や重要文化財の修復においてはトップとも言える存在です。活動の過程においてセルロイドハウスの存在に気づかれ訪問していただきました。また「さわやか交流会2014」にもご出席いただきました。

 元興寺は南都七大寺の一つだけあって、かつては南北四町(約440メートル)、東西二町(220メートル)という広さがあり、今日「奈良町」と言われる一帯の大半が境内でした。
 ユネスコの世界遺産に認定された古刹は国宝三点、重要文化財一点を有していますが、中でも見どころなのが屋根瓦です。調査の結果、極楽堂西南隅、禅室南東隅(ともに国宝)には飛鳥時代の軒平瓦が遺されていることが判明しています。

 寺の訪問の前にはなかなか訪れることが出来ない研究所にも伺いました。文化財修復における頂点ですので土器、仏像、釣鐘、古文書等の修復を行っている現場を見学することが出来ました。
 修復は元の姿に戻してどこを直したかが分からないようにするという高度な技術が要求されます。そのため現場は静かながらも張りつめた雰囲気に包まれていました。

 研究所への訪問は許可を受ける必要がありますが、寺のほうは何時でも拝観可能ですので奈良を訪れる際には東大寺、興福寺などとともに元興寺もコースに組み入れるようにしてください。

松尾 和彦

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