さわやか交流会2015報告

 
 去る2015年10月23日、さわやか交流会2015が大阪セルロイド会館にて開催されました。今回で七回目となりますが、本年は名前の通りさわやかな天候に恵まれ出席者は約40名という盛況ぶりでした。

 岩井会長の冒頭挨拶、物故者への黙祷に続きまして行われました講演は、今回の目玉商品といえる山口集氏の「タキロン産業転換の歴史」から始まりました。
 今年で85歳となる山口氏は昭和二十八年にタキロンに入社された後、セルロイド製造の現場を経験され、最初の海外駐在となられ、ウェールズへ工場を建設されました。そして遂には社長へと昇りつめられ今では名誉特別顧問を務められています。
 講演内容ですが元はと言えば同族企業であった滝川セルロイドが人材を育て、若い人に仕事を任せるという経営方針により上場企業となり、セルロイド製造からパイプ、波板、平板などを製造するようになり、遂には現在のような化学メーカータキロンへと変身していった様子を語られました。
 年齢を感じさせない情熱的な語りで予定していた原稿からは少し離れてしまいましたが、出席者は興味深げに聞いていました。そして今回消化しきれなかった部分は、また来年にということで締めとなりました。

 続いて登壇されました佐藤功氏は関西興産から寄贈され、現在横浜館に所蔵しています装飾金型の調査を行われています。
 膨大な数に上りますので分類化するのは大変な作業ですが、厚さ、書かれている数字などにより分類をされています。
 作業を行っていく中で金型をどのようにして作成していったのかを推定されました。一つの金型の中に制作順序が遺されているものがあるということでした。
 そして金型の中にアンダーカットが施されているものが多くみられます。これこそがセルロイドの特性である可塑時は完全塑性、高温時は完全弾性体、常温では高剛性という特徴がなせるもので、プラスチックではなしえないものです。現在使用されていますPETボトルキャップのアンダーカット率が4%であるのに対して、15%〜62%という驚異的な無理抜き製法が行われています。
 今後はこの製法を解明していくということでした。

 最後に登壇しました松尾和彦副館長は歯ブラシ、歯磨き、洗剤などのメーカーとして知られるライオンの創業者である小林富次郎葬儀のフィルムについて語りました。
 先ずそのフィルム映像を流したのですが約7分間のフィルムは、105年前のものとは思えないほど鮮明で明治の東京を映し出していました。
 1910年12月13日に58歳で亡くなりました小林富次郎の葬儀は三日後に行われたのですが、神田区柳原河岸(千代田区東神田)の自宅を出た葬列の先頭が東京基督教会館(神田YMCA)に到着した時に最後尾は、まだ出発していないほどでした。
 このフィルムは近年、セルロースナイトレートフィルムであるのに現存していることと、戦前どころか関東大震災以前の東京の様子が判る貴重なものなので国の重要文化財に指定されました。
 ひっきりなしに市電(都電)が通過していく様子にも出席者は興味を持ったようですが、延々と続く葬儀の列には圧倒されます。また巨大な白木の墓標が運ばれていく様子や霊柩馬車にも目を見張られます。
 上映の後に小林富次郎の紹介、ライオンとはどのような会社なのか、セルロイドフィルムの話などをして締めました。

 講演の後には例年通りに懇親会が行われ、そこここで歓談する様子が見られました。そして出席者全員が来年も集うことを約束して散会となりました。

 来年以降もさわやか交流会を継続していきますので今後ともよろしくお願いします。


セルロイドサロンの記事およびセルロイドライブラリ・メモワールハウスのサイトのコンテンツ情報等に関する法律的権利はすべてセルロイドライブラリ・メモワールハウスに帰属します。
許可なく転載、無断使用等はお断りいたします。コンタクトは当館の知的所有権担当がお伺いします。(電話 03-3585-8131)

連絡先: セルロイドライブラリ・メモワール
館長  岩井 薫生
電話 03(3585)8131
FAX  03(3588)1830



copyright 2015, Celluloid Library Memoir House