去る2019年11月1日、大阪セルロイド会館に於いて2019年度の「さわやか交流会」が開催されました。当日は名前に相応しいさわやかな秋晴れに恵まれ約30名が出席いたしました。
開催の挨拶と物故者への黙祷に引き続いて今回は、おもちゃ映画ミュージアム代表の太田米男先生による「硝化綿〜酢酸綿フィルムの映像からデジタル化へ」の特別講演が行われました。
日本はフィルム保存ということでは世界で最も対応が遅れている国の一つで、特にサイレント時代のフィルムは1930年代:596/5089,1920年代:153/3711、1910年代に至っては5/2826という状況です。これはアメリカのハリウッドを中心とする国立フィルム登録簿、EUのリュミエールプロジェクトなどに対すると、まことに寂しい状態です。日本の映画会社で適正保存庫を持っているのは東宝だけです。またアーカイブとなりますと国立映画アーカイブとなります。他にも地方の博物館等、個人のコレクション等として保存しているところもあります。
このように多くが失われた要因として火災による焼失、軍需品として供出、再生、証拠隠滅などがありました。
また規格が変わるとその度に映像が失われていきました。映画ではサイレントからトーキー、ナイトレートフィルムからアセテートフィルム、そしてアナログからデジタルへの変換点です。
太田先生はこのような状況を憂いておられて、デジタル全盛時代の現在においても教鞭を取られていた大阪芸術大学でフィルム保存の技術を教えられました。おもちゃ映画ミュージアムを開設されましたのも、その一環です。
おもちゃ映画とは聞きなれない言葉ですが、フィルムを切り取って20秒〜3分程度にまとめたもので家庭用映写機で楽しみました。今では大変に貴重な資料となっています。散逸によって失われることに危惧を感じられた先生が開設された施設こそがおもちゃ映画ミュージアムです。京都の二条と四条大宮との中間にありますので興味を持たれました方は、是非一度足を運んでください。またホームページもありますのでそちらも覗いてみてください。
太田先生の講演、セルロイドハウス横浜館岩井館長の挨拶に続いて登壇しました佐藤副館長は金型調査につきましての報告をいたしました。横浜館には膨大な量の金型が保存されています。それら一つ一つを調べて製品と照らし合わせていくのは気が遠くなるような神経衰弱です。その照合話や、どのようにして型抜きを行ったのかなどの講演を行われました。
その後の質疑応答は両講演者とも丁寧に答えられましたので質問者も納得していました。
講演の後の懇親会は今回初参加の方もおられて各所で挨拶を交わされていました。また常連の方に取りましては同窓会のような和気藹々とした雰囲気の中で進んでいき、また来年の再会を約束して散会となりました。
来2020年も、この時期に開催を予定していますので今回出席された方はもちろんのことご無沙汰されている方、初めての方、全くの素人の方、何れも歓迎ですのでご出席いただきたいと思います。
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